暮らしの中の仏教まめ知識  第36回 『歯みがき』

暮らしの中の仏教まめ知識  第36回 『歯みがき』

暮らしの中の仏教まめ知識 第36回 『歯みがき』

2024年10月13日
テーマ
暮らしの中の仏教まめ知識

歯みがきの広まりに仏教が深くかかわっていることを、皆さんはご存知でしたでしょうか。
古代インドでは、お釈迦様が、弟子たちの口がくさいため、
仏前に詣(もう)でる前に「歯木(しぼく)」で歯を清掃することを勧めました。

古代インドで使われていたサンスクリット語(梵語)に「ダンタカーシュタ」という単語があります。
「ダンタ」は歯、「カーシュタ」は木を意味するので、直訳すると「歯木(しぼく)」となります。
これは、細い棒の先端をかんで繊維を房状にして、歯と舌を掃除する、歯ブラシの原形のような道具です。

お釈迦様ご自身が弟子たちに説いた言葉をまとめた仏典の中に「律蔵(りつぞう)」がありますが、
そこには、歯木についての教えがいくつもあるそうです。
例えば「その時、僧たちは歯木をかまず、口が臭かったので、
世尊(お釈迦様)は、歯木をかむことの5つの利益を説いた」とあります。

その5つの利益とは、(歯木を使えば)口臭がなくなる、食べ物の味がよくなる、
口の中の熱をとる、痰(たん)をとる、眼がよくなる、ということです。

もし、何日も手入れをしなかったら、口の臭いはどうなることか?
想像するとおそろしいですね。
そんな弟子が多くて、その口臭にお釈迦様もたじろいだのかもしれません。

仏教の教えとともに、歯木の戒律も中国に伝わりました。
しかし、インドで歯木によく使われているニームの木は中国にはありません。
そこでヤナギの小枝が使われたため「楊枝(ようじ)」という名称になりました。

『華厳経(けごんきょう)』(八十華厳経・第十一)には、次のような内容があります。

「楊枝を手に持てば、まさに願うべし。すべての生けるものが、心に正しい秩序を得て、自然に清らかになるように」

楊枝を手にして願うことは壮大です。
楊枝(歯木)は、宗教的な意味合いを深め、強調されるようになりました。

 

参考 『いい歯は毎日を元気にプロジェクト』HP、『ライオン歯科衛生研究所』HP、『ビバテック』HPほか

 

ブログ一覧へ戻る
同じテーマの記事