皆さまも「茶懐石」や「懐石料理」という言葉はご存じだと思います。
じつはこの「懐石」という言葉は、仏教から生まれた用語です。
「懐石」とは、茶道においてお茶を美味しく味わうために、お茶をいただく前に出される軽食のことを言います。
しかし、結婚披露宴などで振る舞われるような、お酒を美味しくいただくための料理である「会席料理」と混同され、
ややこしいことになってしまいました。
でもなぜ「ふところに石」なのでしょうか?
「懐石」という言葉、そのままの字面ではなかなか料理には結び付きませんが、
これは禅僧が空腹をしのぐために懐に入れていた「温石(おんじゃく)」あるいは「薬石(やくせき)」が
由来であるといわれています。
温石とはもともと腹や胸にいれて体を温めるカイロのような役割の石ですが、空腹をやわらげる効果もありました。
禅宗の修行僧の食事は簡素で、日に一度だけ。
満足に食事を摂らないと体を温める機能も低下するため、温石で暖をとりつつ空腹をやわらげていたというわけです。
やがて飢えを紛らわすという意味を踏襲し、薬石という名前の、軽い食事を摂るようになったのです。
ちなみに永平寺などの修行道場では、夕食は今でも薬石と呼ばれています。
そんな温石・薬石のように体を温め空腹をやわらげる程度の食事、という意味で、
茶道のお茶の前の簡単な料理を「懐石」と呼ぶようになったということです。
あくまでも正式な食事ではなく、空腹をしのぐ程度の軽食とされるのはこのような理由によるのです。
参考 『禅の視点』HP、『macaroni』HP、『ウィキペディア』HP